コラム―花によせて

花によせて

その7  シュウカイドウ

 庭の梨とサクラの葉の作る日陰に、今年もまたシュウカイドウの花が咲かんとしています。ホタルブクロやホトトギスの濃い緑の茂みにあってひときわ目立つ黄緑色の葉は、左右非対称の楕円形。この不完全さが、シュウカイドウの清楚な存在感を作っていると私は思う。左右対称であったら、こんなにもいとおしくは思えない。不完全なハート型からか、花言葉は「片思い」だ。すーっと伸びた茎の色は赤、その先につける花は薄桃色。
 この色合いは、ひまわりやノウゼンカツラなどの鮮やかな色の夏の花のあとを追って咲き始めるシュウカイドウの、季節をつなぐ役割を感じさます。ベコニアの一種ですが、球茎がマイナス10度にも耐えられる耐寒性を持つ唯一の種類で、ベコニアとは、似ているけど雰囲気はまったく違う。まるで姉妹の性格がそれぞれ違うように。ベコニアはパンツ姿のしゃれた妹なら、シュウカイドウは浴衣をきたお姉さんというところでしょうか。
 私はシュウカイドウが大好きなのです。35度もあるうだる日が続いている時でも、日陰のシュウカイドウを見るとホッとします。すーっと伸びた茎がいくつにも分かれて、3つ、4つと次々と雄花が咲き、その先っぽにやっと雌花が咲く特徴も、なんとなく女性への優しさを感じます。一番よい場所への水先案内をしてくれているようで。
 我家のシュウカイドウは、他の草花がみんなそうであるように、訪問先の赤旗読者のかたの庭からいただいてきたものですが、一株から大分増えて、今ではちょっとした茂みになって涼しげな一角を作っています。それぞれの草花をくださった方を、その花の季節になると思い出すのも、楽しいものです。シュウカイドウをくださった方は、手ぬぐいでほっかむりをして農作業をしていたSさんでした。

臥して見る秋海棠(シュウカイドウ)の木末かな   子規

 子規はシュウカイドウにどんな思いを寄せていたのでしょうか。うなだれて咲くシュウカイドウですから、臥していたからこそ、よく花が見えたのでしょう。子規のやまいとのたたかいをそこに見ました。

       (2012年 8月 4日  記)