コラム―花によせて

花によせて

その4  センブリ

 小学校の遠足で、里山の「まぎやま」に登りました。2年生か3年生の頃だったと思います。
 山のてっぺんで、真っ白い可愛い花を見つけて、吸いよせられました。「山にはかわいい花があるんだ!!」との驚き、そしてたくさん摘みました。今なら、もちろん摘みませんが。
 それが「センブリ」と知ったのは、ずいぶん後でした。いつ誰に教えてもらったのか、定かには覚えていないのだけれど、名前を知ったことで花の存在が確かなものになり、大変感動したことは鮮明に記憶しています。その時、薬草であることも知りました。
 高山植物や山野草が好きになったのは、「センブリ」との出会いが最初のきっかけだったのかもしれません。
どうしてあの時、そんなにセンブリに惹かれたのか、当時は言葉で表現できる力は持ち合わせていませんでしたが、花屋さんの花のようにまわりをパッと明るくしてくれる美しさとは違って、雄大な自然と調和して小さくても楚々としたかれんさで自己主張している姿が、私の感覚を揺さぶったのだと思います。
 時々、山野草の展示会があります。興味があるのでチャンスがあれば見に行きますが、でも、本音を言うと、やっぱり自然と切り離してその花だけ取り出してみても、今ひとつつまらないものだな、と思うのです。
高山植物に至っては、山にあってこそ生き生きしています。出会いの感動は、汗を流して登った充実感とも一体のものです。
出会いはいつでも「センブリ」の時と同じように、この上なく嬉しい。
 共産党の常任委員になってから、だんだん山と離れていきました。今では、足腰に自信がありません、先日、苗場山の登山のお誘いを受けたけれど、本当に自信がなくなりました。花に会えないなんて、こんなに悲しいことはありません。
 でも、雑草に埋もれながら咲く、庭のホタルブクロ、シャガ、ホトトギス、ギボシ、イカリソウなどの素朴な花が、私を慰めてくれます。
              (2012年 5月27日 記)